5-アミノレブリン酸(5-ALA)によるネココロナウイルスの増殖抑制効果に関する論文掲載

2021年2月24日

5-アミノレブリン酸(5-ALA)によるネココロナウイルスの 増殖抑制効果を確認

この度、北里大学獣医学部(青森県十和田市)の高野友美教授らは、ネオファーマジャパン株式会社(東京都千代田区富士見 2-10-2、代表取締役 河田聡史︓以下 NPJ)との受託研究により、 5-アミノレブリン酸*1(以下、「5-ALA」)に、ネココロナウイルスの増殖を抑制する効果があることを明らかにしました。本研究成果は、猫伝染性腹膜炎*2(以下、「FIP」)治療薬開発などに応用できる可能性があります。

本研究成果は、2021 年 2 月 10 日、獣医学系の国際オンラインジャーナル Frontiers in veterinary science に掲載されました。

※なお、ネココロナウイルスは、COVID-19 原因ウイルスである新型コロナウイルスとは異なる種類のコロナウイルスです。

 

【研究成果のポイント】

・FIP に対する治療薬が求められている。

・5-ALA はFIP 原因ウイルスであるネココロナウイルスの増殖を培養細胞において抑制した。

・初代培養されたマクロファージにおいても、ネココロナウイルスの増殖抑制の傾向がみられた。

【概要】

猫伝染性腹膜炎(FIP)はネココロナウイルス感染症です。FIP を発症したネコは 90%以上の確率で死亡に至るため、ネコにとって非常に脅威となっています。現在、FIP に対する有効な治療法を開発するため、盛んに研究が行われています。

FIP は強い炎症を起こすので、治療に際してはウイルスの増殖と炎症作用の両方を抑える必要があります。そのため、FIP を治療する場合、完治させるまでには長い期間を要します。

従って、FIP の治療薬としては、①ネコにとって安全な薬剤、②抗ウイルス作用および抗炎症作用を有する薬剤、が理想的です。

 

本研究で使用した 5-ALA は天然のアミノ酸の一つであり、その大量製造法が確立されて以降、農業分野および医療分野で広く使用されております。動植物の体内でも生産されるアミノ酸であり、高い安全性が確認されています。

私達は、本研究において、5-ALA がネココロナウイルスの増殖を培養細胞において抑制することを確認しました。また、5-ALA はマクロファージ*3 においてもネココロナウイルスの増殖を抑える傾向が認められました。

以前の研究において、FIP を発症したネコではマクロファージにおけるウイルス増殖と共に、炎症を誘発する物質(TNF-α、IL-1β、IL-6 など)が放出されることが確認されています。そのため、マクロファージ*3 においてネココロナウイルスの増殖を抑制し得る 5-ALA は、FIP で特徴的な強い炎症も制御できる可能性があります。今後は、FIP の治療薬として、5-ALA の使用可否を詳しく検討する必要があります。

 

【論文情報】論文名

Possible antiviral activity of 5-aminolevulinic acid in feline infectious peritonitis virus (feline coronavirus) infection.

参照 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2021.647189/abstract

掲載誌

Frontiers in veterinary science (IF:2.245, Q1:veterinary science)

 

【用語解説】

*1 5-アミノレブリン酸(5-ALA)

ヒトや動物・植物は細胞内のミトコンドリアという細胞小器官でエネルギーを作り出すことで生命活動を維持しています。このミトコンドリアが機能するためには、5-アミノレブリン酸(5-ALA)が非常に重要な役割を果たしています。5-ALA は、最終的にミトコンドリアの中で「ヘム」という物質に変化します。ヘムは「シトクロム」というエネルギーを作り出すために必要不可欠なタンパク質の成分となりま す。また、すでに 10 年以上前から健康食品、化粧品、ペットサプリメント、飼料、肥料に活用されている非常に安全性の高いアミノ酸です。5-ALA はがん分野では脳腫瘍や膀胱がんの可視化を目的とした医薬品としても承認されております。また、5-ALA は、ミトコンドリアの機能を向上させることが知られており、埼玉医大を中心としたミトコンドリア病の第 3 相医師主導治験が進められています。

http://5ala-journal.com/

*2 猫伝染性腹膜炎

ネココロナウイルスは、感染した猫のほとんどが無症状あるいは軽度の消化器疾患を示すのみですが、一部の猫で治癒が困難な猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis : FIP)を引き起こすことが知られています。FIP は、全年齢の猫で発症がみられますが、多くは 1 歳未満の子 猫で発症します。発熱、沈うつ、食欲不振、体重減少、黄疸、腹水でおなかがふくれるなどの症状が起こり、完治は難しく治療を行っても回復することは極めて稀です。進行が速いと診断後1ヶ月以内で亡くなることも少なくありません。

*3 マクロファージ

白血球の 1 種。生体内をアメーバ様運動する遊走性の食細胞で、死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの異物を捕食して消化し、清掃屋の役割を果たしています。ネココロナウイルスは特定の抗体を介してマクロファージに感染することが知られています。(抗体依存性感染増強)

 

<お問い合わせ先>研究に関すること

北里大学獣医学部 獣医伝染病学研究室教授 髙野 友美

〒034-8628 青森県十和田市東二十三番町 35-1

 

報道に関すること

学校法人北里研究所 総務部広報課

〒108-8641 東京都港区白金 5-9-1 TEL︓03-5791-6422

E-mail︓kohoh@kitasato-u.ac.jp

 

ネオファーマジャパン株式会社

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